黄金バット 摩天楼の怪人





「正義と自由を護る者!快傑黄金バットの味方あり!」



【原作】永松健夫 【監督】志村敏夫
【脚本】西鐵平、越路貞生
【配給】新映画社
【公開】昭和25年12月4日



STORY



 水爆の数千倍の威力を作り出す恐るべき超原子・ウルトロン。日本が世界に誇る科学者・尾形博士はこれを平和のために有効利用しようと考えていた。
 だが、悪の怪人ドクトル・ナゾー率いるQX団がウルトロン超原子を求めて魔の手を伸ばす。これに敢然と立ち向かうのは正義の怪人・黄金バット。激しい戦いの末に黄金バットはQX団を打ち破る。


CHARACTER FILE

【黄金バット】

 QX団と戦う正義の味方。
 演:?


【尾形博士】

 日本が生んだ世界的学者。「ウルトロン超原子理論」の研究を進めている。
 演:杉寛


【マサル】

 尾形博士の長男。
 演:茂崎幸雄


【カズ子】

 マサルの妹。
 演:鈴丘玲子


【蘭子】

 マサルの姉。
 演:川路龍子


【プクちゃん】

 マサルの友達。
 演:神戸武彦


【大木雄次】

 尾形博士の助手。
 演:上田竜兒


【牧輝行】

 理学博士。
 演:深見泰三


【ドクトル・ナゾー】

 QX団首領。黄金バットと対立する。
 演:?


【ドブスキー】

 QX団副首領。
 演:世島新


【堀江警部】

 未詳。
 演:清水將夫


TOPIC

○「黄金バット」初の実写作品にして日本最初のスーパーヒーロー映画と目される作品だが、フィルムは早期に失われてしまったらしく現存しない。監督は『怪獣マリンコング』などの志村敏夫、出演は上田龍兒、川路龍子、美空ひばり他。モノクロ。上映時間70分。
 黄金バット史だけでなくヒーロー史そのものに名を残すべき作品でありながら、不幸にも幻の作品となってしまった映画。現在ではポスターやブロマイドなど宣材の類がいくつか確認できるのみである。ポスターの黄金バットのデザインは永松絵物語版の黄金バットをかなり忠実に再現している。この黄金バットのマスクは「中の人」の目が見える作りになっているようだ。大魔神のように目の演技がクローズアップされたものかどうかは視聴できないため不明。
 あらすじを見るにナゾーも何らかの形で登場していたようだが、その姿はいまだ確認できていない。残念。
 平和利用できるが恐ろしい兵器ともなる超物質を巡る科学者とナゾーの攻防に黄金バットが介入するという物語は、永松絵物語版よりも加太紙芝居版、後のアニメ版などに近い筋書きのように思える。

○バンリキ魔王Jrさんが提供してくださった資料により、黄金バット以外の役名も判明した。凄い……!

 男装の麗人を演じたらしい川路龍子は松竹歌劇団の男役で名を馳せ、映画で女性版丹下左膳なども演じたことのある人物。上田龍兒(児)はロサンゼルス五輪(1932)出場の体操選手で、昭和29年の映画版『少年ケニヤ』にも出演しているようだ。
 美空ひばりは言わずと知れた昭和の歌姫だ。本作出演時にはまだ13歳で、デビュー5年目あたりとなる。この記事には役名がないので、話題作りのための本筋に絡まない顔見せ程度の出演だったのだろう。

○やはり絵物語版の壮大な世界観をそのまま実写で再現するのは難しかったようで、登場人物にも設定変更やオリジナル要素がみられる。
 マサルとカズ子は兄妹となり、さらにその上に姉の蘭子というキャラクターが作られた。大木探偵長は登場せず、苗字のみが尾形博士の助手に使われた。プクちゃんも地底国の少年というわけではなさそうだ。

○風こぞうさんのブログ(「風こぞうのブログ」……勝手に参考にさせていただきました。すみません)によると、本作の黄金バットは空を飛ばず、バイクに乗って悪人を追跡するのだとか。(情報提供:ガイデンさん)
 昭和25年なので、もちろん月光仮面や仮面ライダーよりも早い。凄いぞバットさん。ただこの事実は埋もれてしまっているので、後続のヒーロー物に与えた影響は単純には計れない。それでもこの時点でバイクに乗るスーパーヒーローがいたという事実は興味深いものだ。
 黄金バットがバイクに乗るようになった事情については、ガイデンさんによる推察をどうぞ。
「この当時は戦後間もなくまだまだGHQによる統治が続いて、日本が貧しい時期の作品であり、当時の映画会社も特撮を駆使する余裕があまりなかったと思います。それに東映の前身である新映画社もインディペンデント映画会社で予算も不十分だったと思いますし、原作通りの空飛ぶ黄金バットを特撮使って再現する技術も余裕も無かったので、苦肉の策としてバイクに乗るタイプに収まったんでしょう。」



2014.4.1
2015.4.12(改)

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