黄金バット










【作】手塚治虫
【発表】昭和57年10月12日



OUTLINE

 「漫画集団創立50周年記念 昭和の50年世相風俗再現 仮装大パーティー」に出席した手塚治虫が自ら紙芝居屋に扮して披露した作品。『未発掘の玉手箱』や『SF・小説の玉手箱』に収録されている。
 締切地獄を象徴する怪人に苦しめられる漫画家のもとに黄金バットが現れ、「鉄腕アトム」のアイデアを授けるというメタな展開であったもよう。


CHARACTER FILE

【黄金バット】

 〆切に悩まされる漫画家の部屋に颯爽と現れた正義の味方。〆切の怪人と対峙し、漫画家のもとに救世主としてアトムを遣わす。


【漫画家】

 ネタ切れに苦悩する漫画家。突如仕事場に出現した怪人「〆切」に責めたてられて絶体絶命となるも、黄金バットとアトムに窮地を救われる。しかし……。


【〆切の怪人】

 悩める漫画家の部屋に侵入した鎧兜の怪人物。漫画家の原稿が白紙であることを詰り、彼から「酒」と「女」を奪って締切地獄に落とす。黄金バットと対決。


【鉄腕アトム】

 黄金バットがかき広げたるマントの内から現れた、言わずと知れた科学の子。黄金バットと共に漫画家に救いを与えた。


【謎の怪人】

 難を逃れたはずの漫画家のもとに現れた別の怪人。人気作家の苦難の道はまだまだ続くようだ。


TOPIC

○「漫画集団」とは昭和7年に発足した漫画家の団体で、手塚治虫が加入したのはアニメ『鉄腕アトム』放送開始の翌年である昭和39年。昭和57年時点での会員数は99名、手塚は50周年記念のパーティーにこの手製の紙芝居を持参した。
 初期作『怪盗黄金バット』ではかなり変化球な悪のバットを描いた手塚だが、今回は正義の味方として黄金バットを登場させ、自身がモデルと思しき漫画家を救わせている。デザインもオリジナルの紙芝居版に準拠している。

○本作では黄金バットと鉄腕アトムが、わずかながらも夢の共演を果たしている。で、それをアトムの生みの親である手塚治虫自身が口演したというのだから贅沢な話だ。ちなみにアトムはピノキオや黄金バット等の要素を組み合わせて創ったキャラだと手塚自身が述べている。昭和一桁世代にしてみれば「黄金バット」は正義の味方の代名詞だったのだろうと想像する。





2015.5.23

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